企業名 | 社会医療法人中央会尼崎中央病院 |
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所在地 | 尼崎市潮江1-12-1 |
事業内容 | 医療業 |
従業員数 | 487人(男性90人、女性397人) |
冊子掲載 | 平成23年度 第3回ひょうご仕事と生活のバランス 企業表彰事例集 |
※上記については、表彰時あるいは情報誌等記載時のデータです。
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一人一人の声に耳を傾け 看護師が辞めない職場づくりを実現
病院勤務の看護師は一般的に離職率が高いといわれています。尼崎中央病院も慢性的な看護師不足に直面していました。「看護師が辞めない職場づくり」を掲げ3年前に看護部長に就いた道脇まゆみさんは、徹底的に現場の看護師の声に耳を傾け、勤務体制、業務、教育の見直しを一気に進めました。結果的にワーク・ライフ・バランスが実現し、20%を超えていた離職率は1桁に改善しました。
看護師が辞めない職場づくりにより、従業員間のコミュニケーションが増え、経営改善につながりました。
3交代から2交代に夜勤の負担軽減
同病院はJR尼崎駅から徒歩3分という好立地にあり、給与、福利厚生面でも平均以上の水準を維持していました。経営陣は「勤務先として条件は悪くないはず」との自負を持ちながらも、離職率が20%を超える現実に手をこまねいていました。このため、増床した新病棟の一つ(25床)が稼働できないままになっており経営面にも影響を及ぼしていました。
現場の看護師を束ねるマネジメントの在り方を見直す必要があると感じた伊福秀貴院長は、看護師長の中で一番若い道脇さんを看護部長に抜擢しました。「道脇さんが担当していた病棟だけが離職率が低く、活気があった。彼女なら変えてくれるはずと委ねてみることにしました」
「どうして辞めるのだろう。どうして集まらないのだろう」。問題意識は道脇さんも同じでした。ただ問題点はうっすら見えていました。「日勤、夜勤の両方ができる看護師でないと採用しないといった古い発想に縛られていました。これを変えないことには」
道脇さんはまず280人いる看護師一人一人と面談し、抱えている不満を洗いざらい吐き出してもらいました。意見を集約し、新病棟のオープンに向けて看護師を募集する際、新たな勤務形態を実験的に導入することを決めました。3交代制で月8回だった夜勤を2交代制月4回とするという内容で「2交代にすることで深夜時間帯の出退勤がなくなり家庭を持った人でも通勤しやすくなった。ハードな夜勤の負担を和らげることを狙いました」と話します。採用枠はすぐに埋まり、オープンにこぎつけることができました。同じ条件を他の病棟にも広げていきました。
「一番大切なのはコミュニケーション」
人が集まってくるようになると、これまで看護師募集のために費やしていた広告費などを削って夜勤当直手当を引き上げるよう改善し、これも実現しました。また、夜勤当直を3人から4人体制へ変え、経費を「生きるお金」に変えました。おのずと現場のモチベーションは上がり、辞めていった人も戻ってくるようになっただけでなく、看護師が自分の知り合いを誘うようになったといいます。
「一番大切なことはコミュニケーションを取ること」と道脇さん。そして、「一人一人の生活を知り、希望を聴き、それに必ず応えようと考えること。できないことはできないと言わなければならないし、ほったらかしにするのが最もよくない」と、真摯に向き合うことの大切さを説きます。勤務時間のちょっとした見直しもその一つ。朝の始業時間を10分前倒しにすることで、勤務終了後18時までに保育園に迎えに行けるようにし、延長保育料を払わなくて済むようにしました。
職員がより安心して働けるよう院内保育所の保育士を増員しました。
ひいては経営改善にも寄与
昨年は、それまで患者10人当たりに1人の看護師を配置していましたが、これを7人に1人に増強。さらに、それまで日勤から夜勤への引き継ぎのために必ず紙に書いていた申し送り事項を口頭での伝達に変えるなど業務の改善も図ることで、残業時間はこの3年、20時間、7.5時間、3.5時間と減少してきました。「なにより、ばたばたしていたのが、気持ちに余裕をもって患者さんと向き合うことができるようになりました」と伊福院長も実感しています。
病院の収支も、3年前には3億円の赤字を計上していたのが昨年は4億円の黒字に転換。働きやすい環境を実現することが、看護師の確保につながり、ひいては経営改善にもつながることを実証してみせています。