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最先端企業見学ツアー

平成24年度 「あきらめなかった人達から学ぶワーク・ライフ・バランスの取組み」

平成24年度最先端企業見学ツアー ~あきらめなかった人達から学ぶワーク・ライフ・バランスの取組み~

開催日 平成24年12月6日・7日
テーマ あきらめなかった人達から学ぶワーク・ライフ・バランスの取組み
訪問先 [1日目]
 株式会社I.S.T(滋賀県大津市)
 財団法人いしかわ子育て支援財団(石川県金沢市)
[2日目]
 加賀種食品工業株式会社(石川県金沢市)

 ひょうご仕事と生活センター主催の最先端企業見学ツアーが12月6日と7日の2日間、企業経営者や労働組合役員のほか、男女共同参画推進員などさまざまな業界の方々が参加して行われました。今年度は、滋賀県にある株式会社I.S.T、石川県の財団法人いしかわ子育て支援財団と加賀種食品工業株式会社を訪問し、それぞれの切り口で「あきらめなかったワーク・ライフ・バランス(WLB)の取り組み」についてお話を伺いました。

【1日目】
株式会社I.S.T
(滋賀県大津市)

 最初の訪問先は、株式会社I.S.T。同社は機能性複合繊維、OA・精密機器用パーツ、計量機器、医療用特殊素材等を扱われている会社です。1983(昭和58)年10月、研究開発を行いその技術を販売する会社として設立され、現在は、研究開発型メーカーとして、開発から製造までを一貫して行われています。
 到着後、管理本部の本郷副本部長に、2000(平成12)年から取り組まれている「GSLプロジェクト」について詳しくお話を伺いました。「世の中にない、全く新しいことに挑戦する!」を企業ポリシーとされている同社は、グループ企業である株式会社I.S.T加美でこのプロジェクトをスタートされました。兵庫県多可郡多可町加美区という高齢者が多い地域の中でこそ生まれたプロジェクトだったそうです。

本郷副本部長
(本郷副本部長)

 GSLは、「Greatly(素晴らしく)、Satisfying(満たされた)、Life(人生)」の頭文字を取ったもので、60歳以上の高齢者を新規で雇用するという取り組みです。多可町加美区は長寿の町として知られており高齢者が多いので、同社は「企業と高齢者のメリットの融合」を目指し、「高年齢者に第二の素晴らしい人生を」とうたい、この取り組みを始めました。工場での熟練作業を誰にでもできる作業へと改善し、他の会社を退職された高齢者を新たに雇用し、その現場で働けるようにされました。1日4時間、午前または午後の好きな時間帯に働き、空き時間には友達や生きがいをつくっていただけるようにとGSL会館という場所を用意しました。そこは、出勤前後の着替え、昼食、趣味、団らんなどの集いの場として利用されているそうです。

 この取り組みで、高齢者に新しい生きがいを提供するとともに、作業の改善を図る若手社員の意識と能力の向上、そして業務改善と合理化による生産効率の向上を実感でき、まさに「企業と高齢者のメリットの融合」になっていると熱く語られました。最初と最後に、本郷副本部長から「10年間やってきて良かった!」という言葉を頂いたのが何より印象的でした。

本社外観
(本社外観)
財団法人いしかわ子育て支援財団
(石川県金沢市)

 初日の後半は、石川県地場産業振興センターで財団法人いしかわ子育て支援財団の高山専門員に「従来の発想にとらわれずWLB認知度UPを目指す」というテーマでお話しいただきました。
 1996(平成8)年に石川県が全額出捐して設立された同財団では、子育て支援のためのさまざまな取り組みを行っていますが、男性の育児参加を促すことが女性の育児負担を軽減し、出生率向上にもつながるとの認識の下、石川県からの受託事業としてWLBの推進にも取り組んでいます。

高山専門員の話を聞く参加者たち
(高山専門員の話を聞く参加者たち)

 2008(平成20)年に実施した県民意識調査では、「WLB」の認知度がとても低く、全国平均(内閣府調査)を下回っている状況でした。それまでは、セミナーや研修で普及・啓発を行っていましたが、それだけではなかなか関心が高まらないようで、「行政だけによる普及啓発には限界がある。民間企業と連携した効果的な啓発方法はないか」と考え、高山専門員は、誰もが目にし、手に取る物でPRできないかと考えたそうです。
 地元スーパーを自分の足で何社も回り、独自のリサーチを実施する中で、牛乳や麺類、卵といった普段からよく手に取る流通量の多い商品に目を付け、地元企業と連携し、地元の子どもたちの顔写真やイラストをかわいらしくデザインした特別な啓発商品を企画・制作。制作コストの負担方法やパッケージモデルの公募・選定、パッケージデザインの制作などにアイデアを出しながら、日々試行錯誤し、販売までこぎつけられたとのことです。
 流通量の多い日販品に、地元の子どもたちを「モデル」としてパッケージにデザインすることで、両親や祖父母、親戚、友人などの消費者の購買意欲を促すとともに、WLBの認知度アップを図り、商品を販売する企業に対してもイメージアップや売り上げ増をもたらすという画期的な取り組みとなりました。

高山専門員と一緒にデザイン制作を行った財団職員の新野さん
(高山専門員と一緒にデザイン制作を行った財団職員の新野さん)

 企業、行政、県民が、"win-win-win"の関係となったこの取り組みは、高山専門員の新しい発想が、WLB認知度アップのための活動だけでなく、企業も県民もハッピーな社会を目指す新しい取り組みにつながったと思います。「来年、県民の意識調査が実施されます。これまでの取り組みが実を結び、WLBの認知度が上がっていることを期待しています」と高山専門員は話されました。

【2日目】
加賀種食品工業株式会社
(石川県金沢市)

 2日目は、加賀種食品工業株式会社を訪問。同社は「金沢に加賀種あり」と言われる和菓子の「種もの」のトップメーカーです。「種もの」というのは、もち米を原料にした菓子材料のことです。創業1877(明治10)年。135年もの歴史があり、「品質を尊重し、技術と人間性を研鑽する」を企業理念に、「守るべきは守り、変えるべきは変える」を実践されている会社です。

 最初に、日根野代表取締役社長からお話を伺いました。「当たり前のことを当たり前にしただけなんです」という言葉が第一声で、続いて、「何より社員の時間を大切にしてあげたい」という社長の思いからこの取り組みが始まったことを話されました。同社は、従業員数200人のうち150人が女性という組織で、WLBの取り組みを「"第3の道"としての、社員が安心して働ける会社の取り組み」と考え、より働きやすい会社を目指すべく、2年前から取り組みを始められたそうです。

日根野代表取締役社長
(日根野代表取締役社長)

 「みんなでかばい合うことができる会社」「気兼ねをせずに休める会社」「誰かがカバーできる会社」を目指そうと決め、そのためには『多能工化』が必要だということに気づき、そこを強化していこうと始められました。女性が、出産・育児を重荷と思わず働き続けるには、自分の意識だけでなく、それができる職場環境も必要です。そんな環境になるようにと多能工化を進められたそうです。その取り組みは、今もまだ進行中で、「まだまだ進化形だ」と日根野社長は話されました。また、正社員を一度辞めてパート社員に変わり、出産、育児とうまくバランスを取りながら働き、育児が落ち着いた段階で正社員に戻るという多様な働き方も導入されています。

 続いて、従業員の方との質疑応答の時間となり、同社の中村製造部長と角副主任に数多くの質問にお答えいただきました。育児休業を利用した時の社内の雰囲気や、WLBの取り組みをする前と後ではどう様子が変わったかなどについて質問が出ました。「実感として、導入した後は、やはり女性が休みやすくなり、女性が辞めずに仕事を続けられる環境になりました。技術を習得するにはとても時間がかかり、この技術を守っていくためにも働きやすい職場環境は必要」というご意見が印象的でした。

 「会社が楽しい。おいしいものを作っている誇りがあります!」という社員の皆さんの笑顔はとても輝いていました。

手作業による製造の様子
(手作業による製造の様子)

【ツアーに参加したセンタースタッフのコメント】
 滋賀県、石川県の先進企業2社1団体を訪問した今回のツアー。「あきらめなかった取り組み」の先には、必ず「働いている方々の笑顔」があったように感じました。それぞれの切り口で、WLBの実現推進活動を通して「働きやすい会社」を目指す皆さんの努力の結果を直に感じることができた2日間でした。

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