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ひょうご仕事と生活センター3周年記念フェスタ ワーク・ライフ・バランスへの誤解をひもとく

開催日・場所平成24年11月21日・兵庫県公館大会議室
事例報告
テーマ ワーク・ライフ・バランスの誤解
 ~ワーク・ライフ・バランスの実現が『経営』にもたらすもの~
講演者 東京大学大学院情報学環教授(社会科学研究所兼務) 佐藤博樹氏
パネルディスカッション
テーマ ワーク・ライフ・バランス実現のために
 ~キーパーソン育成と実現度指標づくりに向けて~
コーディネーター 東京大学大学院情報学環教授(社会科学研究所兼務) 佐藤博樹氏
パネリスト アスビオファーマ株式会社代表取締役社長 横山誠一氏
佐藤精機株式会社総務部長 佐藤哲子氏
ひょうご仕事と生活センター主任相談員 北尾真理子

基調講演
「ワーク・ライフ・バランスの誤解
~ワーク・ライフ・バランスの実現が『経営』にもたらすもの~」

東京大学大学院情報学環教授(社会科学研究所兼務) 佐藤博樹氏

佐藤氏
(佐藤氏)

WLBについては多くの誤解があります。特定の生き方を求めるものではなく、仕事中心のライフスタイルを否定するものでもありません。多様な価値観やライフスタイルを受容できる職場を実現することです。子育て支援や少子化対策が目的ではなく、全ての社員のWLB支援が不可欠です。「ほどほどの働き方」を推奨するものではなく、メリハリのある効率的な働き方の実現こそがWLB支援を実現する必要条件なのです。

WLB支援は人材活用の基本です。WLBという言葉を知らなくても人材活用がきちんとできていればおのずとWLBは実現できていることになります。WLBが実現できている状態とは、社員一人ひとりが仕事上の責任を果たせると同時に、仕事以外の生活で取り組みたいことや取り組む必要があることに取り組めることです。ここで大事なのは、仕事上の責任を果たしているかどうかということ。たとえ毎日定時に帰って、有給休暇を100%取得したとしても、仕事にやりがいを感じられないのならWLBが実現できているとはいえません。

入社してキャリアが浅い時なら仕事に関する勉強をしたいと思うし、結婚して子どもが生まれれば保育園の送迎をする時間も必要です。ライフステージに応じてやりたいことは変わってきます。ワーク・ライフ・コンフリクト(WLC=Work Life Conflict)という言葉があります。これは時間制約の中でWLBが実現できていない状態のことを指します。仕事もそれ以外のことも両方大切なのにそれができないと、仕事にも意欲的に取り組めなくなってしまいます。社員がWLCに陥るようなことがあれば、それをサポートするのがWLB支援です。

WLB支援は3つの取り組みから成り立ちます。私は建物に例えて、土台、1階、2階に分けて説明しています。2階部分は、「WLB支援のための制度の導入と制度を利用できる職場づくり」、1階部分は「社員の『時間制約』を前提とした仕事管理・働き方の実現」、そして土台部分は「多様な価値観、生き方、ライフスタイルを受容できる職場づくり」です。

大事なのは土台づくり。そのためにはライフスタイルフレンドリーな職場にしないといけません。保育園に預けた子どもが熱を出したために早退したいと言う男性社員に「それは妻の役割じゃないのか」と言ってはいけません。育児休業を取りたいと社員から言われた時に「おめでとう。子育てをちゃんとしてから復帰してまた仕事頑張ってね」と送り出せるかどうかが問われています。

 1階部分を実現するには、管理職がマネジメントスタイルを変えることが大事です。部下の能力を高める、時間の長さではなく時間単位で成果を評価する、職場のコミュニケーションを円滑にする。余裕がないなら管理職自身の仕事を見直さなければいけません。これができていれば、2階の制度については法定通り整えてさえいれば十分です。

パネルディスカッション

[コーディネーター]

東京大学大学院情報学環教授(社会科学研究所兼務) 佐藤博樹氏

[パネリスト]

アスビオファーマ株式会社 代表取締役社長 横山誠一氏
佐藤精機株式会社 総務部長 佐藤哲子氏
ひょうご仕事と生活センター 主任相談員 北尾真理子

佐藤博氏
横山氏
佐藤哲氏
北尾
(左から佐藤博氏、横山氏、佐藤哲氏、北尾)
佐藤博
経営にとってなぜWLBの実現が必要なのでしょうか。
横山
明るく楽しい職場、やりがいのある仕事、人が成長する風土の3つが会社の基本です。会社は経営者のためにあるのではなく、そこで働く人のためにあります。そう考えるとWLBは経営戦略そのものです。WLBの実現により個人のモチベーションや能力が向上し、ひいては業績向上にもつながります。会社は働きやすさを提供し、社員は仕事を通じて会社に貢献する関係であるべきです。
佐藤博
佐藤精機でWLBに取り組むことになった経緯は。
佐藤哲
中小企業は財力、人的資源が乏しく、受注型のため仕事量の調節もできません。一方で量産品の生産は海外シフトが進んでいます。地方の研究開発型の製造業として生き残っていくには、WLBの考え方が必要不可欠です。そこで、「技術の向上を意識し、より高い専門知識を望む社員の育成」「定年までまた定年後の生きがいを持って働ける会社を作る」「潤いのある豊かな仕事環境を作る」を掲げ、取り組みを始めようとしています。
佐藤博
中小企業だからできないということはないのでしょうか。
北尾
これまでセンターで支援してきた企業は業種も規模もさまざまです。規模の大小に関係なく、社員にいきいきと最大限の能力を発揮して働きたいという強い熱意さえあれば大丈夫です。
佐藤博
WLB実現にはお金が掛かると思われている方もありますが。
佐藤哲
WLBで大事なことは社員に誇りを持たせること。そこは費用はかからないと思っています。
佐藤博
WLBを実現するにはそれを担う人材が重要です。キーパーソン養成講座を始めた経緯は。
北尾
全国のWLB推進先進企業を訪ねて話を聞くと、そこには必ず旗振り役のキーパーソンがいました。自力で進めるにはキーパーソンの存在が重要と考え、今年初めて講座を実施しました。スキルや知識も大事ですが、異業種の事例を知り、行動を変えていただくことが最も大切だと思い、最終回では自社で何をするのかプレゼンをしてもらいました。意識を変え、まず行動することで「できない」と思われていることが「できる」ことに変わります。
佐藤哲
自分が考え方を変えて行動すること、目標を明確にして思いを共有してくれる人をつくることの大切さを学びました。そのための手法を教えていただきました。
佐藤博
WLB実現のための取り組みの成果は出ていますか。
横山
業績を3倍にするのは大変ですが、人の能力を3倍にするのはモチベーションをあげることにより簡単にできます。風土は醸成されました。これから成果を期待しています。

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