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子育て応援「企業人」セミナーin 尼崎2013 経営戦略としてのワーク・ライフ・バランス!

開催日・場所平成25年9月4日・尼崎商工会議所701会議室
基調講演
テーマ 稲村流ワーク・ライフ・バランスのススメ
講演者 尼崎市長 稲村和美氏
事例発表
コーディネータ 兵庫県立大学政策科学研究所所長・教授 開本浩矢氏
パネリスト 株式会社ヤマシタワークス代表取締役 山下健治氏
株式会社フジ・データ・システム代表取締役 藤嶋純子氏
株式会社栄水化学統括部長・女性のみらい研究室室長 長村和美氏

事例講演
「稲村流ワーク・ライフ・バランスのススメ」
尼崎市長 稲村和美氏

稲村氏
(稲村氏)
仕事と生活は深く関わり合っている

 現在小学2年生になる娘を育てながら尼崎市長の仕事をさせていただいていますが、私自身、普段はワーク・ライフ・バランスをあまり意識していません。ワークとライフのバランスを取るというと、この2つを天秤にかけてどちらが重いのかを考えるようなイメージを持ってしまいますが、実はそうではないと思うのです。ライフには人生という意味もあります。人生において仕事はなくてはならないもの、大変深く関わっています。「ワークとライフは8対2」というように考えられるものではないのです。もちろん、瞬間瞬間を切り取れば「今日は子どものことだけ考えよう」「今は仕事に集中しよう」ということはあります。しかし、ワークとライフは完全に分けられるものではないのです。

 今は、どんな仕事でも以前より少ない人数で効率的にやっていかなければいけない時代です。だとするとこれまでとは違う発想を持たなければいけません。また、この社会にはいろいろな価値観の人が住んでいて、その人たちのニーズに合う製品なりサービスを生み出していく必要があります。そのためには、たくさんの引き出しを自分の中に持つことが大切です。仕事以外の生活が充実していないといけません。友だちと会話をしたり、家族と過ごしたり、趣味の集まりや異業種交流会に参加したりと、職場にいる以外の時間が仕事にいい影響を及ぼしていると思います。

 私は出産して3カ月目に仕事に復帰しましたが、最初は大変でした。子どもは自分の好きな時に泣きます。こっちの都合に合わせてくれたりはしません。この時の経験によって、いろいろな事情の人とチームを組んだり、自分の都合と相手の都合をすり合わせたりする力が養われたと思います。あとは時間のコントロール。やはり料理の時間は非常に短縮されましたね。仕事ができる人は絶対に料理も上手だと思うんですよ。料理は段取りと塩梅。これは仕事にも通じます。また、地域のお母さんたちと知り合い、付き合う中でコミュニケーションの力もアップしたと思います。それから、家事を分担している家族、夫との関係です。お互い不満や要望はいろいろあると思うのですが、ルールとして文句を言わないようにしています。歩み寄ったり、フォローし合う力というのは日々の暮らしの中で身に付いていくものだと思います。

 実際に家庭にどれだけの時間を使えているのかというと、世間の水準よりは少ないでしょう。ただ、長ければいいというものでもないと思います。これは仕事も同じです。職場に長く座っていてもその人のパフォーマンスが優れているとは限らないように、家に早く帰りさえすれば家庭生活が充実するというものでは必ずしもありません。ただし、仕事が長時間でもワーク・ライフ・バランスが取れているという人たちに全ての人を合わせることは、時代的に駄目なんだろうと思います。

人生経験は全て財産になる

 私たちの人生にはいろいろなライフステージがあります。私の場合は学生時代、独身時代、子育て時代、そして今。ライフステージが切り替わると、それまで一緒だった人たちとの関わりが少なくなり、ブランクができてしまいます。でもその時代時代で知り合った人たちに今も大変助けていただいています。ブランクが生じることは仕方ないかもしれませんが、新しいステージでの経験はその後の人生において財産になるのだということを非常に実感しています。

 今の社会では、スタッフが育児休業を取ることや異業種で1年研修することを、ともすればブランクと捉えがちです。それを先行投資とは受け止められていません。しかし、私は家庭や地域でいろいろな経験をする、また、異業種でもまれてくる、これらはどれも甲乙つけがたい学びの宝庫だと思います。ですので、「公私混同」はいけませんが、これからはもう少し「公私混合」をしていくべきなのではないでしょうか。

 また、ライフステージによってワーク・ライフ・バランスも変わってくると思います。年齢によっても人によっても違うでしょう。そもそも人は多様だということを大前提に、いろいろなことを考えていくことが大事です。今ほど、違いを受け入れ合っていかなければならない時代はないと思います。私の父は高度成長期を支えた、いわゆる企業戦士でした。家庭を顧みず、私たちのために働いてくれました。この時代の人たちに感謝をしながら、私たちはさらに欲張っていきたい、仕事だけでなく家庭も充実させたいのです。そして、仕事と家庭の両方をうまく循環させていける職場づくり・社会づくりを進めていきたいと思います。

パネルディスカッション

[コーディネーター]

兵庫県立大学政策科学研究所 所長・教授 開本浩矢氏

[パネリスト]

株式会社ヤマシタワークス 代表取締役 山下健治氏
株式会社フジ・データ・システム 代表取締役 藤嶋純子氏
株式会社栄水化学 統括部長・女性のみらい研究室室長 長村和美氏

開本氏
山下氏
藤嶋氏
長村氏
(左から開本氏、山下氏、藤嶋氏、長村氏)
山下
当社は車の部品や錠剤を作るための金型を製造・販売しています。女性従業員は30人ほどですが、現在3人が育児休業中です。そして、パートさんについては勤務時間帯を自分で選べるようにしています。業務に金型の検査があるのですが、これは一人が長時間し続けるのは厳しい仕事です。そういう意味でも、短時間ずつ複数の人が交代でやっています。10年前にタイに工場を出したのですが、タイでは女性は子どもがいても働き続けます。有給休暇はもちろん、気分が悪かったら休める休暇が年間30日もあります。違う文化であっても、休みやすい雰囲気づくりに努めています。
開本
ワーク・ライフ・バランスに取り組むと、それはコストになるのではという経営者もいらっしゃいますが。
山下
従業員が元気で生き生きと働いていれば、業績も上がります。そのために雰囲気づくりを大切にし、従業員とのコミュニケーションを密に取るようにしています。週に3、4回は一緒に飲みに行って、情報交換をしたり、夢を語ったりします。
藤嶋
弊社は産業系ソフトの設計・開発をしています。ワーク・ライフ・バランスの取り組みとしては、25年前からフレックスタイム制を導入しています。IT業界の平均勤続年数は2、3年ですが、弊社は18.1年。平均年齢も業界は31歳のところ、弊社は43歳です。私は12年前に代表に就任したのですが、当時息子は小学2年生。稲村市長のお話にもありましたが、私も仕事50、家庭50ではなく、仕事も家庭も100でやりたいと思ってやってきました。でも時間は2 倍ありませんので、そこのやりくりは、やはりコツです。
開本
平均勤続年数が長いということですが、人材に居続けてもらう秘ひけつ訣はあるのですか。
藤嶋
社内にコミュニケーション会という皆が会話できる場があります。月に2回ぐらい、社内の会議室で総菜や飲み物を買い込んで飲み会をするのです。また、一つの案件が終わったら休暇を取るという流れがあるので、有給休暇の取得率も77%と高くなっています。
長村
弊社は尼崎商工会議所さんや地元信用金庫さんなどの清掃をしています。例えば朝6時に70人が集まって一斉に掃除をするので、人の配置が本当に大変です。試行錯誤してきた中で一番効果があったのがワークシェアリングです。1人が8時間こなすのではなく、2、3人で分業するようにしました。その分、たくさんの人が働けますし、介護や子育てで短時間しか働けない人にも来てもらえます。逆に、介護や子育てが終わってから正社員になってもらったというケースもあります。
開本
ワークシェアリングをすると管理が大変なのでは。
長村
最初はその人にしか分からない仕事が多かったので、共有するということに手間取りました。でも共有できればお互いに助け合えます。
開本
多能工化ですね。他の2社はいかがですか。
山下
マルチ人間になれるよう、いろいろな仕事を学ばせています。
藤嶋
弊社では一つの仕事に必ずリーダーがいて、そのリーダーがA君は何をしている、B君はこれをしているというふうに把握しています。誰かが休んだ場合はリーダーがフォローの指示をしています。
開本
他に何か取り組みはありますか。
山下
従業員の家族や子どもが参加できる会社行事や、企業見学を随時設定しています。そうすれば子どもとの会話も生まれますし、キャリア教育にもなります。
長村
弊社もお子さんを招いての参観日を実施しています。また、従業員の希望があれば、クリスマスに代表自らがサンタクロースの格好をしてご自宅に出向き、子どもさんにプレゼントを届けています。

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