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尼崎地域セミナー in 2015 仕事と介護の両立について考えるセミナー

開催日・場所平成27年9月28日・尼崎商工会議所
基調講演
テーマ サラリーマン介護~働きながら介護するために知っておくこと~
講演者 独立行政法人労働政策研究・研修機構 副主任研究員 池田心豪氏
事例紹介・パネルトーク
コーディネータ 独立行政法人労働政策研究・研修機構 副主任研究員 池田心豪氏
パネリスト 川崎重工業(株)人事本部労政部ダイバーシティ・グローバル推進課長 今村弥雪氏
(株)Kスカイ総務部係長 中村真由美氏

 9月28日、事業所の経営者や人事担当者を対象に、「尼崎地域セミナー2015 ワーク・ライフ・バランスの実現が介護離職を防ぐ~貴重な人材を失うことは企業の損失~」が、尼崎商工会議所で開催されました。仕事と介護を両立できる支援策とは-。経営側が取り組むべき介護の問題について、基調講演と先進企業の代表によるパネルトークで探りました。

基調講演
サラリーマン介護~働きながら介護するために知っておくこと~
独立行政法人労働政策研究・研修機構 副主任研究員 池田心豪氏

池田心豪氏
(池田氏)

 日本は団塊世代が年を取ることにより、これからどんどん高齢者が増えていきます。しかし、介護の担い手となる人は減っています。家族規模が縮小し、未婚者や単身者も増えています。つまり、介護される人に比べて、介護する人が少ないというのが現実です。今までも「義理の父親や母親を介護するためお嫁さんが退職」というような問題はありました。でも、以前は介護の主な担い手は中高年の女性で、その多くはパート従業員でした。企業の側からすると、その人たちが離職したとしてもそれほど切実な問題にはならなかったのです。しかし、今は正社員の男性、しかも管理職や中間管理職層が介護の担い手となっており、介護問題に対する意識が高まっています。

 現在、全就業者の4%ぐらいが介護をしながら働いています。その割合は年を取るほど高くなり、大体50代の就業者の1割が介護に直面しています。20代30代でも介護をしている人はいます。そして、介護のために離職する人は年間10万人。このうち1万5,000人から2万人が男性です。もうすぐ定年という人や60代の人が多いですが、40代も12%ほどいます。働き盛りで辞めなければいけないとなると経済的に困窮しますし、企業側もこれから経営の屋台骨を支えてほしい人を失います。これは由々しい問題です。

 では、どういう支援策が必要なのでしょうか。大事なことは「育児と介護は違う」ということです。まず、介護は育児ほど拘束時間が長くありません。介護をしながら正社員として働いている人に、「介護が必要な家族はあなたが会社にいる間どうしているのか」と聞くと、「昼はデイサービスに行き、帰ってきたら2時間ぐらいは一人でテレビを見て過ごしている」と言うのです。もちろん、要介護者の中には目が離せない人もいますが、それが全てではないということです。

 ですから、介護者は長期の休みよりも、必要な時に1日とか半日とかこまごまと休める方がありがたいのです。現在、介護休業は法律で93日まで取れることになっていますが、短い期間でも一度取ってしまうとそれで終わりです。それよりも93日を複数回に分けて取得できる方が離職防止につながります。また、介護にはお金がかかりますから、所得が減ってしまう短時間勤務のニーズもそれほど高くありません。定時できちっと帰れる残業免除や出社時間を調整できるフレックスタイム制の方が両立を図りやすいです。

 もう一つ問題なのは、介護をしながら働いている人が従業員にいても、それが企業には見えていないということです。「うちは介護休業の利用者もいないし、誰も介護はしていない」と言う企業さんは結構いらっしゃると思いますが、介護休業ではなく有給休暇を使っている場合、それは人事まで上がってきません。休まずに普通に会社に出て働いていても、夜は認知症で徘徊する家族に付き添っている人、毎週末に実家に出向き離れて暮らす家族の面倒を見ている人など、介護に疲れている人は大勢います。こんな状態の人たちにいい仕事ができるでしょうか。ひどいストレスを抱え、介護者の方が倒れてしまうことがあるかもしれません。大事なのは、「介護で疲れている」「介護で大変だ」と周りに言える雰囲気が職場にあることです。そして、いつ介護者が出てもいいように体制を整えておくことです。定時で帰れる、休みをきちんと取れる企業は、仕事と介護の両立もしやすいのです。

基調講演

事例紹介・パネルトーク

事例紹介とパネルトーク
(左から今村氏、中村氏)
中村
 Kスカイは関西国際空港における日本航空グループ便に関するサービス業務などを行っており、社員の96%が女性です。昨年度、厚生労働省の介護離職を防止するための実証実験に参加しました。その結果、介護は個人個人で抱えている問題が異なるため、一律的な対応は難しいということを学びました。制度の整備以上に、自分の会社にどのような制度があるかを社員に知ってもらうことや、介護をしなければいけなくなった時にまずは会社に相談してもらうことが大切だと分かりました。
 当社は20代が約半数を占める若い会社ですが、アンケートの結果、約2割の社員が介護を経験しており、現在介護をしている社員も5人いました。そして、今後5年間に介護が発生する可能性があると答えた人は7割。うち6割が介護が発生したら離職するしかないと思っていました。介護と仕事の両立は可能なケースもあること、離職しない方が経済的にも精神的にも救われることを伝えていくべきだと思います。今後は社内に介護の相談窓口をつくるほか、介護に関する研修を実施する予定です。
今村
 当社でも2013年に40歳以上の従業員を対象にアンケートを取りました。介護をしている人が11%。今後5年間に介護をする可能性については、80%近くがあると答えました。また、介護に直面した時も仕事を続けたいという人が6割近くいたのですが、実際は続けられないと思う人が21%、45%が続けられるかわからないと答えました。この続けられない、わからないという人をいかに続けられるようにするか、これが会社として取り組むことだと思います。また、介護をしている11%の人に「自分が介護していることを上司や職場に話したり相談しているか」と聞くと、誰にも話していない人が31%もいました。
 当社は、介護休業は最長36カ月まで取得可能で分割もできます。時間外や休日勤務の制限ができたり、介護事由によりフレックス勤務を選択できたりします。制度整備に加えて、55歳の従業員に対し介護に関するセミナーも実施しています。1万6,000人の従業員がいますが、介護支援制度を利用する人は本当に少なく一桁です。今後はもっと制度の周知を図り、介護セミナーを各工場で誰でも参加できる形で行いたいと思っています。
池田
 介護をしている従業員がいても人事には見えにくい現実があります。どうすれば人事まで上がってくると思いますか。
今村
 上長の研修で、介護は他人事ではないと繰り返し伝えています。また、介護していることを言い出せるような組織をつくってくださいとも言っています。
中村
 まずは会社が介護問題に積極的に取り組んでいる姿勢を見せることだと思います。
池田
 従業員が何を求めているのか、その都度耳を傾けていくことが大切ですね。この制度があれば介護離職者がゼロになるというものではないですから、どうしても辞めるしか方法がないという人に対しての再雇用制度も有効だと思います。
事例紹介とパネルトーク

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